作品紹介
これはある兄弟の話です。二人はサヤを共にする豆の兄弟であり、やや生真面目な兄と対照的に奔放な弟の自己紹介で幕を開けた物語でありましたが、その後の弟の発言によって、兄の心は大きく揺さぶられることになっていきます。淡々とした弟の語り口ではあるものの、それは兄にとって、これまでの兄弟の歩んできた歴史の否定だけではなく、自身の存在さえも揺らぎだす様子が妙にリアル。果たして兄の心は、どうなってしまうのでしょうか。
描かれる主題は、自己と世界の認識です。視聴者は、豆の視点を通して、自身の記憶の連続性や世界のとらえ方の信頼性が、極めて脆いものであるということを突き付けられていきます。
当初兄は、直面した事態に必死に対応しようと試みています。自身からは、弟の奥が見えていないという描写があるのは、自分の認識が正当化されるための情報が十分ではないことを認め、情報の非対称性に対する未知の可能性をけして否定しない姿勢であることがはっきりと表現されています。この時点では、まだ世界認識の枠組みが崩壊しているのではなく、修正可能であると兄が「期待」しているということに他ならない。しかし、事態が単に互いの誤解や齟齬の類ではなく、また、弟の妄言による悪戯ではなおさらなく、より深刻であることが明らかになるにつれ、いよいよ兄の世界は全く違ったものとなっていくのです。否、その違いとは、既にこれまでもそこに存在していたのであり、それに兄が今まさに気が付いたに過ぎません。そして、ここから兄の自と他は急速にその境界を失い、自身の誤りなのか、世界の誤りなのかのいずれも意味を成さなくなった過程は、全く別次元の存在としての視聴者に、その答えを求めるという時空を超えた表現によって達成されました。この表現技法は「MBD(マメ・ビヨンド・ディメンション)法」としてより高次の発展を遂げることになるかもしれませんね。